太陽「だめだ、隠れないと・・・」
楓と太陽は急いで部屋を出るが、もう足音はかなり近くまできていた
太陽は急いであの緑の扉を開けた
楓「そこの部屋は…」
太陽はいきおいよく開け、セイの造った庭園へと二人は入り込む
楓「ここ、入っちゃだめなのよ?」
太陽「セイにはあとから謝っておくよ」
庭園に入るのをしぶる楓の腕を太陽は強引に掴む
太陽「実は俺…方向音痴でさ…でもここの庭園から裏にも出れるってのは覚えてるんだ!」
狭いけれど立派な日本庭園をさ迷う二人
楓「ここ、セイさん、が造ったんでしょ?」
まだ呼び捨てはなれないようで名前を呼ぶのにどことなくぎこちなさが残る
太陽「そうみたいだね、整備とかは業者頼んだようだけど、花とか木とか石とか全部あいつだね、よくやるよ、セイも」
太陽は大きな木のもとへと楓を連れて行く
楓「大きな木・・・」
太陽「この木はセイとはじめてこの家に滞在した時に植えたんだ。結構大きくなるもんだよな」
楓「道明寺の家なのに、私はここには来たことがなかったわ」
楓の言葉に太陽は笑う
太陽「俺だってまだ言ったことがない別荘とかあるんだよ。まあそこも道明寺のものになっちゃうんだけどね」
太陽の笑い声が響く
セイ「お前ら…」
太陽と楓「!!!」
突然のセイの声に驚く二人
太陽「セイはいつも突然あらわれるなあ!!」
セイ「お前らが俺のいるところに来るんだろ、で、何してるわけ?ってまあ言わなくても大体わかるけど」
セイがやれやれといった感じに楓のほうに視線を向ける
楓「庭園に入ってごめんなさい。あの、裏口を教えていただけると・・・」
楓の言葉をさえぎるようにセイはある方向を指差した
セイ「あっち」
楓「ありがとう!!」
楓はセイにお礼を言ってそちらに向かおうとする
楓と一緒に出ようとする太陽をセイは服を引っ張って止めた
セイ「お前まで一緒に行くな」
太陽「…送っていこうと思っただけだよ」
セイ「どうだか」
太陽「それにほら、裏口からならまた迷うかもしれないじゃん?」
セイ「・・・・」
セイは少し考え、無口になる
セイ「じゃあ俺が送るよ。太陽、お前は大事な時期なんだから出歩かずにここにいろ」
セイの言葉に太陽は力なく笑う
太陽「セイはいつも手厳しいな~・・・そうそう俺の親とお前の親と、道明寺家当主と、俺の兄貴。帰ってきたよ」
セイ「それを早く言え!!!」
セイは太陽に早く戻れと言う様に背中を家のほうへと押す
セイは楓の手を掴み、すごいはやさで裏口から出た
楓「いたたたた・・・」
セイ「・・・君さ、わざとここに来た?」
楓「え?」
セイの言葉の理由がわからずキョトンとした表情を見せる楓
セイ「・・・・」
楓の表情を少し冷たい瞳で見るセイ
楓「あの・・・」
セイ「まあ、いいや。ここから道明寺家の別荘までは僕のほうが覚えてる」
セイはそう言って、楓についてこいといった感じで歩き始めた
楓「ありがとう!」
楓は素直にお礼をする
セイはそれに返事をかえさなかった
数十分歩き、その間無言だったが先に話はじめたのはセイだった
セイ「太陽の家、今大変なんだよ。ただでさえ揉めてるときに、君まで関わってしまったら大変なことになる」
楓「私の家、道明寺と合併で揉めているとは聞いたわ、あと太陽・・さんのお兄さんと私が婚約者なことも。。。」
セイ「本当に、何も知らない跡取りだったんだね。女だし、しょうがないか」
楓「馬鹿に・・・しないで」
セイの言葉に声を荒げる楓
でもそれにセイは失笑で返した
セイ「じゃあ、馬鹿にされないようにするんだな。商談相手を誰かに教えてもらうだけじゃなく、自分でもちゃんと調べろ、覚えろ。教えられることを覚えるだけじゃ、跡継ぎにはなれないよ」
楓「・・・・・・」
セイの言葉に何も言い返せない楓、楓が無意識に後ずさりをしてしまい、バランスを崩す
セイ「!危ない!」
楓「!!」
転びそうになる楓を抱きかかえるセイ
楓「!!」
少し恥ずかしそうに下を向く楓、だがセイは楓の腹部に視線を向けていた、それに気づく楓
楓「これは!」
セイが楓を抱きかかえた瞬間、少しだけ捲くれあがってしまった服、そこからは楓が隠している痣が見えていた
楓は慌てて服装を正す
セイ「・・・・」
セイが何かを話そうとする前に、楓は逃げるように家へと向かった、でも途中楓が振り返りセイへと叫ぶ
楓「あの!ありがとう!また・・・家にいってもいい?」
セイ「・・・・太陽が良いっていったんなら、いいんじゃない?」
セイの返事に嬉しそうに楓は笑う
セイは少しその場に立ったまま、楓の姿を見送った
楓が家にたどり着くと、飛びつくように出迎えたのはハナだった
ハナ「楓様!!」
ハナの今にも泣き出しそうな表情に、楓の心臓がキュッと痛む
楓「ハナ、黙っていなくなってごめんね」
ハナ「・・・楓様」
いつになく素直な楓に少し驚くハナ
楓「あとでハナに話があるの、その前にお風呂に入ってきてもいい?」
ハナ「準備いたします」
楓はすぐに部屋へと向かう
ハナはバタバタとお風呂の準備をはじめ時刻を確認した
ハナ「当主にばれなければいいのだけれど」
ハナはそうつぶやいた。楓が学校に行かず、家出をしたこと、半日で家出は終わったけれど、それが当主にばれないかどうかハナは心配でたまらなかった
お風呂場に来た楓に、時刻を見ている姿をみられたハナ
楓「・・・ハナ、お父様にはなんて言ってくれたの?」
ハナ「具合が優れないと・・・」
今日は学校の後、当主がつけた家庭教師の勉強があった。でもそれをキャンセルしていたハナに楓は感謝の気持ちでいっぱいになる
楓「嘘をつかせてごめんね。ちゃんとするわ」
ハナ「楓様・・・」
楓の表情が変わったように感じたハナ、楓はそのままお風呂へ、ハナはまだその場に立ち尽くしていた
ハナ「・・・そうだわ、タマをここに呼びましょう」
いろいろなことがあり、やはり一人では目が行き届かないと感じたハナは、まだ日本にいるタマをこちらに呼ぼうと決めた
☆☆☆
続く