不知火の歌が終わる、歌が終わったと同時に、不知火はツカツカと楓の目の前まで向かってきた
楓「…お上手でしたわ」
不知火が目の前にきたのだから、そう歌の感想を言うしかない楓
不知火「…楓、君の為に歌ったんだ!そう言ってもらえて嬉しいよ!」
楓「…!」
不知火はそう言って大げさに喜んだ後、楓のことを抱きしめてしまった
セイ「…さすが代議士ご自慢の息子だね」
セイは楓を抱きしめてる横で不知火のほうを怖い目つきで見てそう言った
不知火「…」
その言葉を聞いた不知火の表情がそれまでは笑顔でチャラそうだったのに、一瞬にしてこれまでみたこともないような険しい表情へと変わった
不知火とセイの視線の間に火花が散る
不知火「なんで知ってるんだ?」
セイ「さあ?」
不知火「……」
不知火はそのまま冷たい表情で楓のほうには見向きもせず、ふいっとその場を去って行ってしまった
楓「あ、ありがとうセイ。助かったわ」
セイ「何もしてないよ」
楓「…」
セイはそう言ったが、楓は笑顔を浮かべそのままうつむき加減で嬉しそうにしていた
太陽「…」
そんな二人のやり取りを一番近くで見ていた太陽
太陽の心の声(なんか、もやもやするな…悪いものでも食べたかな)
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そのセイとのやり取りの後、不知火は碧のほうへとやってくる
碧「だから…私がある部屋を用意してあげるからそこで…」
男子生徒「合意のもとって事にもっていきたいから…なんとか道明寺楓からその部屋に行くように仕向けたい」
男子生徒2「それはいいな。自分からその部屋に向かったって事実があれば…」
不知火「なんの相談?ぼそぼそこそこそと…」
碧「…!!不知火様」
不知火「ねえ、碧ちゃん、なんの話?」
碧「えっ…あの」
不知火は碧を後ろから抱きしめ、この三人の悪い計画話を簡単に聞き出すのだった
そして残された楓達はというと…
セイが楓に向かって少し怒ったような口調でこう切り出しているところだった
セイ「…君は女の後継者なんだから、もっとうまくあしらうようにならなきゃ。これからもっとこういう場が多くなっていくよ」
セイに真横でそう言われてしまった楓
セイのその言葉に、楓の全身は恥ずかしさで一気に熱を帯びてしまった
楓「わかってるわ…今日は、ありがとう」
セイ「……まあ、こういうのも慣れだよ」
楓「ええ…」
セイと楓がそういうやり取りをしている中、その話を面白くなさそうに隣で聞いていたのは太陽だった
太陽「でもさっきのは楓ちゃんがこれだけ綺麗なんだから、仕方ないんじゃない?女の後継者だからって誰でもこういう目に合うわけじゃなくて、楓ちゃんだからこういう事態になったんだよ」
楓「太陽…」
太陽は思わず楓を庇った、だがセイからの厳しい言葉は止まらない
セイ「これから数百万人が働くグループのTOPになろうって女が、この程度でおろおろしてたら困るってこと。いつでも…俺たちが助けれるわけじゃないんだから」
楓「っ…」
セイのこの言葉に、楓の心臓がドキンと大きく反応してしまった
太陽「そりゃ、今回はたまたま楓ちゃんがパーティーにでるって情報がきたから俺たちも…ん?てことはセイ、楓ちゃんがこうなるかもしれないって思って、パーティーに出るって言ったの?」
セイ「…」
セイが太陽の言葉に否定するわけでもなく、ただ微笑んだ、その顔にまた楓の心臓がドキンと跳ねる
楓「え…」
セイ「さあね、そう思うならそう思っててもいいんじゃない?」
太陽「あ、お前どっちだよ!」
セイ「…少し外の風に当たってくる」
太陽「…あ~なんだよセイのやつ…しかし俺ものど乾いたな、飲み物取ってくる。楓ちゃんは?ここにいる?」
楓「あ、私は少しお化粧直しに…」
太陽も少し居辛くなったのか、その場をそそくさと後にした
楓は、自分の心臓が跳ねた理由がわからずに、落ち着こうと深い深呼吸をしていた
そして三人は、別々の方へと分かれて過ごす
楓はすぐにお手洗いに向かおうと歩き出した
だが同級生やパーティーの出席者達に、のきなみ声をかけられて捕まってしまった
楓はいろんな人と挨拶や会話を交わし、しばらく時間がたってからようやくお手洗いへと行けたのだった
そのころ、大瑞家の庭では、セイが夜の風にあたっていた
セイ「らしくないな…」
セイがそうつぶやいた声は、夜の寒さで白い息へとかわっていった
その頃飲み物を取りにいた太陽も色々思い悩んでいた
太陽「……セイ、もしかして…?いやでも、まさかな…」
女生徒「太陽様!あの、少しお話してもよろしいでしょうか?」
太陽「……」
太陽も女生徒達に絡まれてしまう
そして、一人になった楓はお手洗いへ
お手洗いからでると、楓のもとに、一人の大瑞家の使用人とみられる人が声をかけてきたのだった
使用人「道明寺楓様、先ほど男性から道明寺楓様にお手紙をお預かりいたしました」
楓「…え?」
使用人「それでは」
使用人はその手紙を楓に渡し、そそくさとその場を後にした
楓「手紙…というよりはメモ用紙のような…」
楓がメモ用紙を開くと
【パーティー後、二階の奥の部屋で君を待っている、太陽には秘密で二人で話をしたい】
こう言葉が書かれていた
楓「太陽には秘密…もしかしてセイかしら」
差出人の名前もないそのメモ用紙の差出人を、楓はセイだと思い込んでしまう
そして、夜は更けていくのだった
☆☆☆☆
続く