タマ「その腹立つ記事はパーティーの二日後にでたのさ。道明寺家の前にも記者がおしかけてくるようになった…でも正直楓様も、私の母のハナも、そんなのにかまってる暇はなかったんだよ」
~~~~ここは過去の道明寺家、部屋のなかで震えている楓の姿があった~~~~~
ハナ「楓様…」
昨夜、あのパーティーから急いでハナが楓を連れ帰ってきた。
セイと太陽にその場を任せ…
あのあとセイと太陽と不知火たちがどうなったか
実は不知火と男二名が病院送り、太陽とセイは無傷
これだけでどれだけ太陽が暴れたかわかるだろう
だがいろんな大ごとを避けて不知火は極秘入院していることになっている
ハナは医者を呼び寄せ、楓の身体を調べさせようとしたが、それよりも楓の精神状態が危険だと判断し、医者の診察を嫌がる楓の言う通り、診察は受けさせないことにして今にいたるのだった
楓「・・・・・・・・・・」
楓はハナに何かを話そうとはするのだが、どうやら声がでなくなったことに自分自身も驚いているようだった
震えもとれていないようで、しばらく仕事上の都合ということで学校も休むことに決定していた
ハナ「いいんですよ、無理に話さなくても…今はしばらく休みましょう…」
楓にそう優しい言葉をかけるハナ
少し時間をかけたほうがいい、ハナはそう思っていたが現実はそれを許してくれなかった
パーティーでの出来事が、面白おかしく新聞や週刊誌に載ってしまったのだ
【道明寺楓、道明寺財閥の跡取りのふしだらな交友関係。あの!三人の男達との危険な四角関係】
ハナ「これは…」
ハナはその記事をみて愕然とする
ハナ「いつもなら当主がもみ消すはず…なぜ載ってしまったの…?」
ハナは楓にはばれない様、仕事の合間を使って記事を読み漁った
ハナ「清宮家と道明寺家の婚約についてはまだ載ってないわね・・でも天月の二人と…これはあの男性、不知火の家についてだわ…代議士の息子?!だったの?歌手だと如月様に聞いたのだけど…あら?如月様の記事は少ないわ…ええっと【如月聖也はこんなときにもある開発に成功、しばらく如月聖也が開発したものに変わるものは世にはでない】……如月様のことはいいことばかりだわ」
ハナが自室でもくもくと記事の確認をしていると、道明寺家の使用人の女たちの声が廊下の方から聞こえてきたのだった
使用人1「それにしても楓様も記事が本当ならすごいわよね…今をときめくビロードの歌手で実は代議士の息子だった不知火様に愛の歌を捧げられて、それをたしなめた天月の如月様でしょ~、そしてそんな二人を睨むようにみてる清宮様!パーティーでそんなことがあったなんて!…四角関係の行く末、気になるわよね~~」
使用人2「ほんっと、真面目で少し浮世離れしたお嬢様だって思ってたけど、案外お嬢様もやるわよね~」
使用人の声を聞き、ハナは自室の扉をいきおいよく開けた
ハナ「あなたたち!!!」
使用人2「!!!いらっっしゃったんですか?!」
使用人たちが驚くのも無理はない、ハナはいつもなら楓様につきっきりでいる時間だ
ハナ「……仮にも道明寺の使用人ともあろうものたちが…」
使用人1「!!!!!」
ハナの怒りはおさまるはずもなく、使用人たちはこってり説教されてしまうのだった
実は道明寺家の中でも、楓に近づける使用人を自分と少数だけにとどめるよう手配したハナ
今の喋れない楓のことは、道明寺家の内部でも極秘で扱われていたのだ
その楓の様子をしらない者たちは、楓のことを好き勝手いってしまっていたようだった
ハナ「これは教育しなおさないといけないわ…」
ハナはそう鼻息荒くしていたが、ふとあの日の光景が頭の中にフラッシュバックした
ハナ「半裸だった楓様…最悪の事態はなかったと思いたいけれど…今の楓様の様子を見る限り・・・・私が楓様に嫌がられてもおそばにしっかりついていれば…」
ハナは楓の無残な姿を鮮明に思い出し、また自責の念にかられ、一人その場で涙を流すのだった
そしてその後も道明寺家の報道はとまらなかった
いつもならば当主がもみ消すであろうスキャンダルなのに、もみ消されることがなかったのだ
それは、当主があえてそうしていたのだ
~~~道明寺グループ、会長室~~~~
西田「…さしでがましいことをお聞きしますが、楓様の件、このままでよろしいのですか?」
西田の父親が道明寺家当主にそう聞いていた
当主「…プライベートなことは口にするな」
西田「ですが!!今回の記事で道明寺家の株は大暴落…人員削減は免れません」
当主「・・・・・・・・」
西田「…会長?」
当主は椅子から立ち上がり、高層階の窓から東京の街をみおろした
当主「・・・あれは一度こういう目にあったほうがいい」
当主の言葉に西田の眉間にしわが寄る
西田「ですが…恐れながら楓様はあの日の夜…」
西田があの日の夜の出来事を、まだそういう行為があったのかは確定はしていないが、耐えられず、当主に話してしまった
そしてそれを当主は黙って聞いたのだった
西田「使用人頭が止めれる状況ではありませんでした。ですので使用人頭の処分だけは…」
西田はあの日の状況を詳しく説明し、ハナに落ち度がなかったことも訴えた
だが、いつもの当主ならそもそもこういった話など聞かないだろう。
でも今回の当主は、黙って西田の説明を全部聞いてくれた
そのことに西田は嬉しい反面、ものすごく動揺もしていた
西田は当主の考えが読めなかった、当主の口が開き、西田は何を言われるのか予想つかないため、身を強張らせてしまう
当主「…あいつには医者の診察を、子ができていたらおろせ。それと、記事の件に関しては口出し無用。このままにしておけ」
西田「…!!ただでさえ言葉がでなくなってる楓様がさらに傷つくことに…!」
あまりにもな当主の言葉に西田はつい言い返してしまった
当主「黙れ!!」
当主が怒り、杖でドンと床を突いた
西田「っ・・・・!!もうしわけ…ありませんでした」
当主「このままで、だ。もう次はないぞ、わかったな」
西田「はっ」
当主の言葉に西田は震える手を抑えながら、ただただうなづくしかできなかった
なぜ、道明寺の株が大暴落しているにもかかわらず、当主はこれをもみ消さなかったのだろうか
その意味を、のちに楓は理解することになる
だがいまはただ、真っ暗闇の中をあてもなく歩いている、そんな状態のか弱い女性そのものの楓だった
☆☆☆☆
続く