楓が話せなくなって一週間がたっていた
さすがにもう仕事を理由に学校を休むには限度があった
ハナはどうすればいいのか悩んでいた
ハナ「・・・・楓様」
幸か不幸か、道明寺家当主は楓のことをほおっておいていた
そのおかげで楓は当主に怒られ説教されることもなく、跡取りを首になることもなく、学校も休むことに意見されるわけでもなく、楓を休ませることができる現状を維持できていた
ほおっておいているのはあの記事に関してもだったが…
記事にストップが入らないせいで、週刊誌や新聞やメディアでは道明寺楓について面白おかしく報道していた
楓「・・・・・」
ハナがどれだけそのことを楓から隠そうとしても、さすがにもう楓の耳にも入ってしまう状態にまでなっていた
楓はそういった記事を部屋で泣くわけでもなくただただ真顔でみつめていた
ある記事では【女の跡取りはやはり失敗?女が社会にでるのは間違い】などと書いていて
楓は世の中の仕事する女性達をも敵にまわしてしまっていた
ある働く女性がインタビューをされたときに【男遊びしてる人と私たちを一緒にしないでほしい】等といわれてしまうありさまにまでなっていた
ハナ「本来ならば、会見を開き、間違いであること、世間を騒がせたことを謝罪しなければならない…でも楓様があんな状態では…」
すると、なにやら外が騒がしくなった
ハナ「叫び声?」
ハナが窓の外を眺めると
ハナ「あれは!!」
ハナは窓から見えたものに驚き、玄関へと走っていくのだった
それは、如月家と清宮家の車が道明寺家に入ってきていたからだ
ハナ「なんてこと…」
楓と噂になってる二人が堂々と道明寺家に入ってきてしまった
それは記者の格好の餌食だった、ものすごい数のカメラのフラッシュが光っていた
ハナは慌てて玄関に向かったが、もうセイと太陽が玄関から入ってきていた
ハナ「!!!!か、楓様はまだ…!」
他の使用人たちもこの二人を必死に止めていた。
だがこの二人は何も関係ないといった感じにずかずかと進んできていたのだ
ハナも慌てて止めようとするが、屋敷の奥に進もうとするセイと太陽の足は止まらなかった
ハナ「・・・さらに噂になってしまいます、ここはどうかお引き取りを」
ハナが二人の目の前に回り込み、そう頭を下げた
だが、セイがハナをちらりと見た後、少し怒っているかのように、ため息をついて話し始めたのだった
セイ「……帰ってやりたいのはやまやまだが、このまま黙ってたら道明寺家がやばいってこと、さすがにハナさんならわかりますよね?」
ハナ「・・・・・・」
ハナはセイのこの言葉に何も言い返せなかった
さすがにもう、楓を世間から隠しておくには限度があったのだ
太陽「午後から会見を開きます。俺たちと一緒なら、楓も大丈夫だろ」
ハナ「………それについては…感謝いたします…ですが!!お耳にいれておかねばならないことが…」
セイ「?」
ハナは楓が話せなくなっていることを二人に伝えた
セイ「・・・・・・」
太陽「・・・・やっぱあいつ殺しときゃよかったな」
太陽が怖い目でそうつぶやいた
だがセイはそれに対してこう言った
セイ「こういう世界で、あんな風に無防備だったら遅かれ早かれおこっていたことでもあるんだ。ここで何もできないで部屋にひきこもって泣いてるだけの女だったら、道明寺財閥跡取りなんて無理だ。その場合は午後の会見で跡取りを正式に辞退するとあいつの口からちゃんと世間に伝えなくちゃ。あいつはそういう立場なんだよ・・・ここで理解させなきゃだめだ。あいつだけのせいで、何百人以上が地獄の生活に落ちると思う?」
ハナ「・・・・・・・・」
これに対しハナは何も言い返せなかった
普通の女性であれば、傷を静かに癒すことができただろう
だが、道明寺家跡取りとなると話は別だ
大企業を背負っているのだから、個人の感情が優先されるべきではないのは、ハナでも理解できることだった
そして確かに、楓の今回の事件の報道のせいで、道明寺家の株が大暴落し、人員削減をしなければいけなくなっていた
路頭に迷う家族はひとつやふたつなんかじゃおさまらないだろう
ハナ「・・・・・わかりました。楓様はこちらです」
セイ「・・・・」
ハナは、楓の今後のためにも、今は鬼になると決めた。
そしてハナはこの二人を楓の部屋へと案内するのだった
☆☆☆
続く