準備のため楓兄が部屋の続き扉のもうひとつの部屋へと物を取りに行く
それを確認したハナは楓の方へと近づいた

使用人頭ハナ『改めて、ここの使用人頭は娘のタマになります、何卒よろしくお願い致します』

タマ『よろしくお願い致します』

楓『タマ、よろしくね』

タマは数年前からハナの跡をつぐべく道明寺家に住み込みで働いていた

この若さで使用人頭となれたのは、もともとの使用人頭だったハナがとても優秀だったこと、そしてその優秀さに負けず劣らずタマも優秀だったからだ

元使用人頭ハナ『楓様、楓様にお手紙をお出ししてもよろしいでしょうか?』

楓のそばで少し小声で伝えた
楓はそれを聞きとても嬉しそうに目を輝かせた、その時部屋に楓兄が戻ってくる

楓兄『楓、どうした?』

その様子を見て楓に問いかける楓兄

楓『海外で素敵なお土産期待してます、お兄様!』

楓兄『あはは、そういうことか』

楓はごまかすようにそう笑った

楓兄『…楓とお前は仲良さそうにみえるから、付き添いはいらないと父上に伝えたが、ダメだった、ごめんな、楓』

楓兄から視線を向けられびくっと驚く元使用人頭のハナ

楓も驚いていた

恐る恐る元使用人頭のハナが問いかける

元使用人頭ハナ『ご存知でしたか?』

楓兄『楓の様子をみてたらわかるよ、あぁ、父上には言わないから安心して、楓、わたしも手紙だすからな!』

さっきの会話も聞こえていたようで楓兄がそう笑う

楓はそんな兄の様子をみて、本当にとても嬉しそうに笑っていた

楓『…さみしいな』

嬉しそうにしていたはずの楓が突然さみしそうに言葉を漏らす

楓兄も、元使用人頭ハナもそれを見てとてもさみしそうだ

タマもさみしそうにしている

楓兄『あぁ、そういえば楓、わたしの友人の一人が楓に英語を教えてくれるそうだ、既に頼んでおいたから、本当に優しい友人だ、わたしの唯一の親友といってもいいかもしれない、そいつが明後日屋敷にくるから、よろしくな』

楓『えっ!』

兄から思いがけない事をされ驚く楓

楓兄はそれを見て、口角をすこし上げ微笑んだ

楓兄『英語勉強して、わたしのところにも遊びにおいで、もともと英語は勉強してきたから、後は楓は会話技術を磨けばいいだけなんだから』

そう言って楓兄は笑った

楓兄の秘書らしき物が楓兄を迎えにくる

そうして慌ただしく楓兄も元使用人頭ハナも出発していってしまった

部屋にはタマと楓だけが残された

タマは楓にお風呂に入るようにと伝える

そんなタマの姿を見て楓は

楓『昔の使用人頭みたいよね、タマって』

タマ『?』

楓の思いもよらない返答に頭の中にハテナマークが浮かぶタマ

楓はそんなタマの様子を見てこう続けた

楓『あっ、表情はでるんだね、タマの母親の使用人頭はね、昔は何を言っても表情ひとつかわらない人だったのよ、まぁ私といるときだけ違ったんだけどね』

そう言うと何故か得意気な楓

タマ『存じております』

そうこたえたタマに面白くなさそうな楓

楓『ふーん、そっか、母娘だもんね』

タマ『??楓様、お風呂冷めてしまいますので』

楓のつぶやきが聞こえなかったタマはまた再度お風呂を勧める

楓は次は素直に聞きお風呂へと向かった

楓は、大好きな使用人頭だったハナの娘であるタマを羨ましく思っていたのだ

タマも、普段はロボットのように働いているハナが楓の前にいくと少し人間らしい表情になるのを知っていた
少し羨ましいと思った事はあったが、母親が大事にしている方を今後自分が守るんだという思いの方が強かった

そして、それから数ヶ月後、あの最悪の事件が起きる

 

『道明寺財閥、跡取り、行方不明』

これは新聞の一文だ、タマと楓は慌ただしく屋敷に戻ってきては何かを探していく色んな使用人達をここ数日何度も目撃していた

誰も理由を言わず、ただ屋敷は荒らされていっていた

そして新聞を見て、楓とタマの知ることとなる

楓は新聞に驚き、震え上がる

楓『どうしよう、お兄様が、なんで…』

タマも驚きを隠せない

理由もわからず、誰に何を聞いても何も教えてもらえず、そのまままた1ヶ月がすぎた頃、屋敷に旦那様が帰ってきた

楓は、記憶のかぎりはじめて父親と会う

楓の小さな頃にお兄様から、夜中に父親は帰ってきているからもう寝ている楓に会えないと聞いていたが、このころになると父親は帰ってきていないのだと楓は知っていた

屋敷の大扉が開かれる

屋敷のなかにいる使用人全てが出迎えている

楓はこそこそと玄関近くにある部屋の扉に隠れ父親の姿を見ていた

絵に書いたような厳格な男の人が扉からはいってくる

楓は一目みてそれが父親だとわかる

あまりの嬉しさに、楓は父親の目の前に飛び出してしまった

父親の動きがとまる

楓『お父様!!』

飛び出してきた楓の様子を目だけ動かし確認する父親

その父親の片手があがり、父親のそばについていた男の部下達が楓を父親の前から引き離す

楓『??!お父様?』

楓の呼びかけなど何一つ聞こえていないのか

父親は何事もなかったかのようにその場を去っていってしまった

またその父親のあとをついて、元使用人頭ハナの姿もみえた

楓は思わず叫んでしまった

楓『ハナ!!』

後ろ姿のままハナは肩をびくっと揺らす

楓『あっ…』

楓は言ってしまったあと、秘密だったと思い出し焦った

それよりも楓の目の先では一気に血の気が引いた顔になったハナの青白い顔を、やっと振り返った父親が睨むように見ていた

楓のほうからはハナの表情は見えないが、ハナの顔を睨む父親の顔をみて、そして楓も恐怖で身動きができなくなってしまった

タマも身体を硬直させていた

たくさんいるであろう広間に、静けさが広がっている

父親がふっと視線を部下に向けた

部下はハッとした表情をしたあと父親がやった手の動きをみて、視線をハナに向ける

その眼には涙が浮かんでいたようにもみえた、元使用人頭ハナは、完璧な仕事をしていて時折優しい気遣いをしてくれる、部下や他の使用人達から信頼され好かれていたのだ

部下はハナの腕を掴む、ハナもそれを理解したのか、抵抗はしない

ハナは部下に連れられ、今入ってきたはずの玄関の扉からまた出て行った

楓『え、え?』

一人、事態が飲み込めないでいる楓

タマも、何かを覚悟しているような、強張った顔つきをしていた

ある一人の部下が、歩くのをやめない父親のほうに向かって言葉を発してしまう

部下『ハナさんだけは、辞めさせないでください』

その部下の言葉を聞いて、他の使用人や部下達の顔がまた凍りつく

言葉を発した部下はその様子に気づかずまだ続ける

部下『ハナさんは完璧なかたです、娘のタマさんも素晴らしい!そんな方をこんな簡単に辞めさせては…』

父親『…西田』

父親は側近である秘書西田に声をかけた

この西田もまた、道明寺楓ののちの秘書になる西田の父親だった

西田『はっ』

西田は答えるやいなや先程の部下の腕をすぐにつかみ、外へと連れ出してしまった

そして、状況を理解した楓は膝から崩れおちていった

☆☆☆

続く

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