楓のセイへの恋心は、楓にとっての初恋といってもいいだろう
セイを思うだけで、勝手に心臓が早くなる現象に楓は慣れないでいた
でも、その感情に気づいてしまっても、何もできないまま日々は過ぎていく
そして今日は、楓と清宮の兄、両家顔合わせの日だった
~道明寺家ホテル~レストラン内~
個室、といっても広い部屋に通される楓
楓は綺麗な着物を着せられていた
楓「…太陽も来るのかしら」
楓は久しぶりに太陽に会えるかもしれないのが、嬉しくもあるが、セイを想ったまま婚約しなければいけない辛さも同時に味わっていた
楓「…一時の気の迷いで…道明寺家グループを壊すわけにはいかないわ…」
ホテルの窓から見える綺麗な夜景が切なくうつり、よけいにセイを想う楓の心を辛くさせた
清宮家当主「これは!想像以上にお美しいお嬢さんだ」
道明寺家当主「いやいや、そちらこそさすが清宮家の長男、精悍な顔つきで素晴らしい。うちの娘にはもったいないですな」
清宮と道明寺家当主が、お互いに握手して出迎えあう
その声で、彼では我に返った
慌てて楓も清宮家に挨拶のお辞儀をする、すると清宮家は当主と長男の二人だけで太陽や母親はいなかったのだ
道明寺家当主「我が家も早くに母親を亡くしていますから」
清宮家当主「そちらも、後妻を迎えては?」
道明寺家当主「いやあ~私はもうそういったことは引退してますから」
清宮家当主「道明寺家当主ともあろう人がもったいない!!」
道明寺家当主と清宮家当主は楽しそうに歓談している
楓はイタリアでの出来事を思い出していた
楓の心の声(そういえば太陽は二番目の奥さんの息子だっていってたわね…私の婚約者、お兄さんはもう亡くなった一番目の奥さんの息子さん…)
楓は太陽とセイから聞いていた清宮家の事情を思い出す
楓「…」
道明寺家と清宮家がやっとお互い席に着いた
楓は父親の後ろの方にいたため、自分の婚約者を確認することができないでいたが、席についてやっと顔をみることができた
楓の心の声(太陽と似ているのかと思ったけれど…天然パーマじゃなく髪の毛はサラサラっとしているし…今にも消えてしまいそうなくらい、繊細そうな人だわ)
楓の婚約者、太陽の兄は優しそうで穏やかそうな、本が好きそうな顔つきをしていて太陽とはあまり似ていなかった
太陽の兄「はじめまして、清宮光陽(せいみやこうよう)です。楓さん、これからよろしくね」
楓よりは10歳上の太陽の兄、光陽は落ち着いた雰囲気でそう優しく楓に笑いかけた
楓「よろしくお願いします」
楓は光陽に慌ててお辞儀をかえす
清宮家当主「これはなかなか、お似合いかもしれませんよ」
道明寺家当主「真面目な者同士、話が合うかもしれませんな」
清宮家と道明寺家当主がそう嬉しそうに笑いあい、お酒を飲み始めた
こうして、両家顔合わせがスタートしたのだった
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しばらく仕事やお互いの家についての歓談が続き、両家当主に促され、楓と光陽は二人でホテル内にある庭を歩くことになった
光陽「どうぞ、こちらへ」
光陽が慣れた手つきで楓をエスコートしてくれる
楓は光陽の手を取り、庭の方へと向かうのだった
光陽「……楓さんみたいな、若くて綺麗なお嬢さんが、私みたいなおじさんと結婚なんて本当は嫌だよね。ごめんね」
光陽がそう楓に伝え優しく笑う
楓は思わず首を横に振った
楓「…光陽さんは、優しいんですね」
思わず楓はそう言ってしまった、その言葉に対して嬉しそうに光陽は笑ってこう言った
光陽「太陽の方が優しくていい奴だよ。楓さんは太陽と仲良しだって太陽から聞いてたんだ。イタリアで会った話も少しだけ聞いてた。よかったらイタリアでどんな風に太陽と出会ったのか教えてくれない?太陽もそこだけはなぜか教えてくれなかったんだよね」
光陽がそう言って優しく笑いかけて聞いてくる
楓は光陽に対して嫌な気持ちにはならなかった
楓の心の声(すごい優しい人…こういった人で良かった…これから長い年月一緒にいなきゃいけない相手なんだもの、いがみ合う相手よりずっといい…)
楓は、光陽が婚約者で良かったと思ってしまうのだった
楓の心の声(だってこれがもしセイだったら…私はいつか心臓がどうにかなってしまいそうだもの…)
楓は、セイの顔を思い出し、空を見上げてそう思うのだった
そしてセイの顔を思い出してしまったせいで、楓の心臓がまた、ズキンとした痛みを感じてしまう
楓の心の声(…………道明寺家にとって清宮家との繋がりは大事だわ…恋愛なんて、一時の気の迷いなんだから…私は大丈夫)
楓はセイを想って切ない痛みを感じる自分の心臓に、そう言い聞かせてしまうのだった
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続く
今日も読んでくださってありがとうございました^^