楓「……なんでこんなことをするのよ…」

 

唇を離した太陽に、楓はこう聞いた

 

必死に泣かないようにしているような、複雑そうな表情だった

 

太陽「……少しは恥ずかしがったりするかと思ったけど…」

 

太陽の言葉で楓の顔がカアッと熱を帯びる

 

楓「…このことはなかったことにするから…太陽、もう出てって、私は平気よ」

 

楓は多少うろたえはしたが、すぐに気丈さを取り戻し、太陽のことを冷たく突き放すのだった

 

太陽「…」

 

太陽はそんな楓に何も言うことはできず控室から出ていこうと扉を開ける

 

太陽「っ…」

 

楓「…セイ…」

 

セイ「…」

 

太陽がいきおいよく扉を開けた時、セイが扉の前にいた

 

セイはしまったというような顔だったが、眉間にしわをよせ、セイもまた複雑そうな表情を浮かべているのだった

 

太陽「…」

 

太陽は黙ったままセイの横を通り部屋を後にした

 

セイ「…」

 

セイもまたそんな太陽に声はかけない

 

楓「…セイ…」

 

楓は太陽とのやり取りをすべて見られていたであろうことを、セイの表情を見て察したのだった

 



 

太陽は会場へ戻る前の誰もいない廊下で立ち止まる

 

太陽「なにやってんだ俺は…」

 

その言葉とともに太陽は拳を振り下ろし、壁がガンっと大きな音を立てた

 

太陽「……兄の婚約者だから、仲良くなって取り入って、兄との連絡手段に利用しようと思ってたのに…こんな俺の感情は予定外だ…」

 

太陽はそうつぶやきもう一度、壁を叩いてしまった

 

太陽「……兄が清宮を出て道明寺家の婿となれば、道明寺との繋がりは深くなる、それは会社にとってはいいが…兄は清宮家の人身御供のようなものだ…兄は心臓が弱い。道明寺家に行けば否応なしに働かされて命を縮めてしまうだろう…婚約者に取り入ってうまく操縦できれば…兄について色々してやれたのに…俺はその頼みの綱すら自分で潰したのか…」

 

その太陽の上場は今までの太陽とはまったく違っていた

 

いつか、英徳学園のカフェテリアスペースで太陽は一人こうつぶやいていたことがある

 

太陽「道明寺楓だぞ、使わない手はないじゃないか」

 

そう、太陽は病気の兄のことが心配で、楓のことを利用しようとしていたのだ

 

太陽にとって誰よりも大事なのが、血がつながっていない兄だった

 

だからこそ、不知火の時にも人一倍怒ったのだった

 

兄の婚約者に何をしたんだという感情が太陽を切れさせた

 

だが実はそれだけの感情じゃなかったことに、太陽は今日気づいてしまったのだ

 

太陽「……男社会の今の世の中で、必死にTOPに立とうとしている楓ちゃんのことを、素直にかっこいいと思ってた。ドンドン冷たくキツクなっていく彼女を見て、辛いなと思う反面、強い子なんだと嬉しくもなった…不知火に触られてる楓ちゃんを見た時、全身が怒りに震えた、その理由は兄の婚約者だからじゃなかったんだ…この感情は…」

 

太陽は自分の気持ちに気づき深いため息をつく

 

太陽「………もう後戻りはできない、誰よりも大事な兄の婚約者に俺はきっと兄より先に唇を奪ってしまったんだ」

 

太陽は、兄の顔を思い出し、苦しそうな表情へとかわる

 

太陽「……」

 

そして何かを決意したのか、苦しそうな表情で目を閉じていた太陽が目を開けた時

 

すごく鋭く、冷たい目つきに変わってしまったのだった

 

そして…控室に残されたセイと楓は

 

セイ「……」

 

楓「…今のは…何も見なかったことに…してくれる?」

 

セイ「…そうだね」

 

嫌な空気の流れる中、二人はこう約束を交わしたのだった

 

だけど、楓の心中は穏やかではなかった

 

楓の心の声(私はもしかしたら…今日の卒業プロムで、世界で一番大事な二人を、失う日なのかもしれない)

 

楓はセイのほうをみて、なんとなくだがそう思ってしまう

 

セイ「……あのさ」

 

楓「はい」

 

セイ「もしかしたら太陽も君のこと好きなのかもしれないけど、君は卒業後結婚するんだろ?」

 

楓「……光陽さんが良い方で、大学卒業後に入籍しないかとおっしゃってるんです」

 

セイ「ははっ、太陽のお兄さんらしいや、優しいな」

 

楓「ええ…」

 

セイ「…」

 

楓はセイの「太陽も」という言葉がひっかかっていた

 

もしかしたらセイも自分のことが好きなのか?楓はそう思ってしまう

 

だが楓はそれをセイに聞くことができない

 

楓「あの…セイ」

 

セイ「ん?」

 

楓「……なんでもない」

 

セイ「……」

 

セイも楓の表情を見て何かを察しているのか、何も伝えようとはしなかった

 

セイ「…俺も卒業おめでとうのキスしてもいい?」

 

楓「…え?」

 

セイが突然そう言ったかと思うと、楓の返答を聞く前に楓に優しくキスをしたのだった

 

楓「…セイ…」

 

セイ「…卒業おめでとう。道明寺家グループのTOP、道明寺楓として活躍するのを、ずっと見てるから、頑張れよ」

 

楓「セイ…!」

 

セイは優しく微笑んでそれだけを言って控室を後にした

 

楓「…セイ…」

 

楓はセイを引きとめることもできない

 

楓「ここで追いかけちゃだめだ…私は…道明寺楓なのだから…」

 

楓は足が鉛のように重く感じる

 

楓「……」

 

こうしてこの日の楓が予感したとおり、楓とセイと太陽は、この日からもう会うことがなくなってしまったのだった

 

☆☆☆

 

続く

 

今日も読んでくださってありがとうございました^^

 

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