楓の娘、椿は幼児期からも美人だと褒められ、賢く優秀だと周りから絶賛されていた

 

だが当の楓はずっと浮かない顔だった

 

時々しか日本の自宅に帰れない楓は

 

そのたびに成長した我が娘を見る

 

その時の感情は、ほかの人には理解できないであろう複雑な感情だった

 

お腹を痛めて産んだ娘だが、はいはいしたのも、立ち上がったのも、歩き始めたのも、話し始めたのも

 

すべて自分が最初に見れるわけもなく、お腹を痛めていない育ててくれている周りが見てきた

 

そしてそんな楓の事を、TOPとしては優秀だが、母親として最低だと、周りが面白おかしく騒ぎ立てる

 

楓はそれに一切言い訳も弁解もしない

 

なぜなら、それは事実だから

 

両立ができない仕事、道明寺財閥ともなるとそうなるのは当然だ

 

だが、娘と仕事とどっちが大事なんだと責められることも多かった

 

楓「……」

 

だが楓は責められていても、すべて笑顔で交わしてきた

 

もしも娘を取り、道明寺財閥が傾いたとしたら、それこそ娘のことを生かすこともできない

 

財閥が傾くのは、普通の人が仕事を辞めるのとはちょっと違う

 

数百万の人から責められ、絶望と地獄を味わうであろうことが簡単に想像できた

 

そして、世間にそうやって責められるまま数年がたった

 

だがここで、さらに世間を騒がせる出来事がおきたのだった

 

それは、道明寺楓が二人目を妊娠したこと

 

ただでさえ、母親不在の子育てを世間に叩かれていた時の二人目妊娠は、道明寺楓を最低な母親だと言わせるのに十分な出来事だった

 

二人目が臨月に入り、久々に楓は自宅でゆっくりとした時間を持つ

 

だが、臨月でも簡単な書類には目を通してはいた

 

そんなある日、光陽が東京の自宅へと戻ってきた

 

楓「…珍しいわね」

 

光陽「さすがに、一目、顔を見ておこうと思ってね」

 

光陽は、忙しい中楓の顔をみにきたのだ

 

楓「…お身体は?」

 

楓がそう聞いたのには理由があった、もともと身体が弱い光陽は、ここ数年、時々入院もしていたのだ

 

光陽「二人目が生まれる楽しみのせいで、最近は元気が良いよ」

 

楓「そう、それは良かったですこと」

 

甘いセリフのはずだが、この夫婦が話していると、そんな甘さはかき消されてしまう

 

光陽「…君がもう一人ほしいと言ったとき、驚いたよ」

 

楓「……」

 

そう、実は二人目妊娠を懇願したのは楓のほうだった

 

楓は、光陽や周りには伝えていなかったが、女の跡取りだけは嫌だったのだ

 

光陽「……もし男の子だったら、跡取りをその子にしたいって言ってたね」

 

楓「ええ、女の跡取りはダメだわ」

 

光陽「君みたいな素晴らしい跡取りに、椿ならなれると思うけど」

 

光陽が笑ってそう答えるが、楓はそれを笑って返す

 

楓「ご冗談を…そんなことあるわけがないでしょう」

 

光陽「…そうか」

 

楓は、昔よりさらに冷たい言葉で話すようになっている

 

そのことが、光陽との間にも亀裂を生み出してしまっていた

 

だが、隙をみせることができない世界各国との重要会議に何度も参加していれば、こうなるのも当然なこと

 

楓は、この時にはすでに、隙の無い氷の国の女王様というレッテルが世間から張られているくらいだったのだ

 

光陽「……それじゃあ、仕事に戻るよ。無事の出産を願ってる」

 

楓「…ええ、ありがとう」

 

前みたいな可愛い少女のような表情を、楓はもう持っていない

 

誰にも感情も隙もみせない、ただ一人きりの氷の国の女王に、楓はなっていたのだ

 

だがそんな楓がかたくなに二人目をほしがり女の跡取りにしたくなかった理由は

 

自分のような人生を女の椿にさせたくなかったからだった

 

そんな楓の優しさを、今はもう、誰一人気づくことはない

 

そうして楓は、秘書や使用人はいるが、心を許してる人が周りにいない

 

ただ一人きりの孤独な出産に、また挑むのだった

 


 

 

今日も読んでくださってありがとうございます( *´艸`)

 

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