道明寺楓は、牧野つくしに対してありとあらゆる試す行動を行った
だがそれは少しでもつくしに疑わしいところがないか、見極めたいが故の行動でもあった
楓「どうせあの小娘もいつか尻尾を出すわよ…本当にお金目当てでないと確信がない限り、道明寺家へ入ってなどこれないわ」
それは当然のことでもあった
道明寺家が抱える個人情報は莫大な数にのぼる
加えて、世間に知られたら困ることはひとつやふたつではない
少しの気のゆるみが、大事なものを失うのだと楓は身をもって経験してきている
楓が様々なことをつくしに行ったが、つくしは全て楓の思惑通りには動かなかった
それは楓にとって、人を信用してもいいのかもしれないと思わせるひとつの小さな光でもあった
でも、楓はそれでもまだ、つくしの事は信用できないでいた
なぜなら、自身の息子でもある司のどこがいいのかさっぱりわからないというのもあったのだ
楓「……暴力的で差別的、日本語が弱く、空気が読めない傾向がある。見事に育て方を失敗したわね…ふふっ…といっても当然でしょうけどね」
高いビルの最上階の一室、会長の部屋で楓は司の情報がまとめてある書類をみて、ため息をつきながら静かに笑うのだった
楓の周りで、西田以外の秘書や社員からは、息子をも仕事の駒に使う女だと酷い言われようだった
楓「そりゃあ駒になるでしょう、道明寺家の息子なのだもの、逃れられない運命っていうのが世の中にはあるのよ…私みたいにね」
楓が書類をデスクに置き、席を立つ
楓は、久しく見ていなかった窓の外を眺めた
楓「……思えば私も年をとったものね、司は太陽に顔がそっくりだけれど、性格はひねくれちゃったわね、逆に椿は…」
ふと楓は椿が好きな相手と駆け落ちしそうだった時のことを思い出し、眉間にしわを寄せた
楓「あんな感情は、人生に取るに足らないもののはずよ…」
そう、司の姉の椿はお見合い相手と結婚する前に、一度大好きな相手と駆け落ちしようとしていた
だが、楓がその相手の父親に、椿から手を引かなければ道明寺家とそこの家の取引をやめると伝えた
そうしたところ、相手の男はすぐに身を引いたのだった
楓「……あの程度で身を引くような男ならば、幸せにはなれない」
楓はやはり自分の選択は失敗ではなかったのだと思ってしまう
悲しい事に
楓はほかの人たちより【諦める事】がとても上手だった
上手というよりは、そうせざる得なかった人生だったからだ
セイへの感情も諦めた、女でいることも、楓としていることも諦めた
あるのは道明寺家財閥を支える女会長ただ一人の存在
楓はその女会長として今生きている
自身の感情などは置いてけぼりで、常に諦めているのが現状だ
だが、そのことに不満ももたずに今は働いている
自分は道明寺家の人間だから、そう生きることが当たり前だと楓は思うようになっていたのだった
だが、楓が諦める事がうま過ぎて、人より強い精神力の持ち主だったことが
色んなことに災いを呼んでしまっていた
自分の息子や娘も、当たり前のように諦めれる
そう考えてしまったのが、すべての間違いに繋がる歯車だった
この先、楓の思い描く未来は牧野つくし、たったひとりの存在により、簡単に崩れ去る
だが楓が思い描いていた未来よりは、いまある未来の方が、色鮮やかで素敵な未来なこと
楓も、司と同様に、牧野つくしに助けられた一人の人間だったのだ
今日も読んでくださってありがとうございます
もう道明寺楓のお話はラストスパートです
次回に何を書こうかなどまだ決まっていません(;’∀’)
みなさんが読んでみたいカップリングなどありましたら教えてください(*´ω`)