大河原滋とのお見合いの日
楓の息子の司はちゃんと黙ってついてきていた
だがお見合いの途中で、司は突然走って逃げだしてしまう
楓「…大河原様、申し訳ありません…」
楓は司の行動を信じられなかった、どうして【自分が我慢をすれば誰も悲しまない最善の道】を選んでいるのに
司が我慢しない理由が楓にはわからなかったのだ
楓「たかが10代の頃の感情じゃないの…」
楓はそうつぶやいたが、自身の胸にも違和感を感じる
楓「…道明寺財閥のTOPとして、この感情は些細な事のはずよ」
楓は、色んな事をこの言葉を自身に言い聞かせ諦めてきた
自分自身の事を、楓は一番大事にしてこなかったのだ
傍若無人に見える道明寺楓だが、楓は常に会社の為に動いていた
楓「…このお見合いがうまくいかないと道明寺家は傾くわ…」
楓は一人会長室で頭を抱えている
司の暴力や暴言を野放しに見逃してきたために、道明寺家は先行き不安だと世間が報道している
そのせいで道明寺の株は大暴落、少し危ない状態だ
そこにこのお見合いはちょうどいい話だった
石油王の日本人などどこにもいない
道明寺家より素晴らしいお嬢様との縁談を司はぶち壊したのだ
もうこれで自分が守ってきた道明寺家は潰れる
父親にも亡くなった兄にも、太陽にも顔向けができない
たくさんの部下が地獄へと落ちるだろう
楓は毎日、道明寺家をなんとかたてなおそうとを、今まで以上に仕事へと没頭する
だが、そんな状況を救ったのはほかでもない牧野つくしだった
牧野つくしがたまたま自殺しそうなおじさんを助けた
そのおじさんの開発したプログラムは本当に素晴らしいもので、お金になるものだった
そのお金は莫大な資金にもなり、道明寺家をたてなおすどころか、より大きくしてくれる発見だった
楓「まさかあの娘に助けられるなんて…」
自殺を助けてもらったおじさんは、司の婚約者だと報道された牧野つくしの顔を見て、あの助けてくれた少女だ!と喜んで道明寺家に取引を言いに来たのだった
そのおじさんの出した条件のひとつに、牧野つくしが道明寺家の跡取りの婚約者というのが本当ならば、そちらと独占契約をする、そんな申し出だった
楓は、正直色んな感情を牧野つくしにもっていた
なんの努力もしてこなかった人間だと馬鹿にしていた
自身がありとあらゆるスパルタ教育を受けてきたため、マナーも何も持っていない牧野つくしの存在がうらやましく、そして妬ましくもあった
そんな存在に助けられた
普通の人ならプライドが邪魔して、牧野つくしのことを認めないだろう
だが、楓はそうではなかった
楓「…牧野つくしとの婚約を認めます。すぐに記者会見の準備を、それと牧野つくしの身辺調査と監視を」
西田「はっ」
楓は自身のプライドは捨てた
大事なのは数百万人の部下の命や未来だ
ただの一般庶民の牧野つくしの存在を認めることは、楓にとって辛いことだったろう
つくしの父親は、お金を借りてギャンブルで大金を溶かすような人間だ、母親はパートさえ続かず高校生の娘に頼りきりで見栄の為に英徳をやめさせず、身の程知らずな学校へ娘を通わせいじめにもきづいていない、だが娘が大事だと叫んでいる人間
弟にいたっては、姉のつくしが頑張ってどうにかしてくれるものと無意識に思っているのか、中学生でも家事や買い物もできるだろうに、ただただ変わる環境に涙を流してお姉ちゃんどうしようとすがっているだけの人間
こんな家族がくっついている牧野つくしの存在を、楓は正直認めたくなどなかったのだ
楓「たかだか高校生の娘にこんなにいくつもバイトさせて家事までさせて……いじめを受けているのも関わらず学校にも通い、家族が英徳に通うことを喜ぶために退学することもせず、着替えもマナーも何も躾けてもらえず買ってももらえず…苦労ばかりで金に困っている庶民が道明寺財閥の婚約者…」
楓は会長室で牧野つくしの家族に関する書類を見ながら、またため息をひとりついていた
だが少し面白くもあるのか、顔は笑っている
楓「…ふふふ、いいでしょう。ここまで困っていても司にお金の無心をしないのは認めてあげるわ。少しでも変な動きをしたら…その時は…」
楓は牧野つくしに関する書類をもう必要はないというように、笑顔で破り捨てるのだった
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