司達を乗せた船は総二郎たちが行っていた別荘へと入っていった
そして、他にも招待客がいたようで、船を降りた瞬間に司に珍しく緊張が走る
司「まじかよ」
つくし「…」
船を降りる姿ひとつにも、女性にはマナーがあり、つくしは緊張しながら一歩一歩進んでいた、そんななか司の顔色が変わったことに気づいてはいても、笑顔をたやすことができないため、司の緊張の理由をすぐには聞けずにいた
司のエスコートにより、順調に二人は別荘の中へと進んでいく
2人は顔を笑顔で固定したまま、こそこそと会話をはじめた
つくし「ど、道明寺…どうしたの?」
司「牧野、今ここに世界の大富豪TOP3の妻達がいるっていったら…どうする?」
つくし「え」
司「ばか、変な声だすな、顔は固定しとけ」
つくし「あ…」
つくしはすぐに平常心の顔に戻る
つくしはモデルや芸能人の辛さはもしかしたらこういうものなのかもしれないと心の中で思うのだった
無事に会場内に入り、二人だけの控室が与えられていて、つくしと司はその部屋へと通された
パーティーがはじまるまでまだ時間があるようで、その間ここでつくし達は休憩することにした
つくし「はあああああああああああああ」
司「おまえ、すげえため息」
つくし「そりゃそうなるよ!なに?!TОP3って!なんで?!船から会場に歩くだけなはずなのに、周囲にずらーーーって人が並んでて…あれ誰?!」
司「あれは、西園寺家の使用人たちだな」
つくし「もーーーー…やっぱり庶民のあたしには…こんな世界向いてないよ」
つくしはつい弱音をぽろっと吐いてしまった
気が抜けたのもあったが、司はその言葉を見過ごすことはできなかった
司「……それは俺との結婚を考えたいって事か」
普段なら叱咤激励してくれる司からそんな言葉がでたことに、つくしは瞬間的に言ってはいけない一言を言ってしまったことに気づいた
つくし「ごめん、そんなつもりじゃなくて」
司「まっ、確かに今までのお前の世界とは違うのかもしれない。けどよ、お前はお前なんだから、いつもの牧野でいろよ」
つくし「……でも、それじゃダメだから花嫁修業してるわけだし」
司「まあ、ある程度マナーっつーのは必要な生活ではあるけどよ、俺はお前ならできると思ってる。だからそんな馬鹿なことはもう言うな」
つくし「……うん、わかった、ありがとう」
喧嘩せずにはすんだが、二人の間には微妙に沈黙が残った
パーティー開始まであと数十分
2人の部屋に、やはりあの男が扉をたたいてくる
コンコン
司「はい」
翼「…挨拶にきた」
司「…」
翼の声に司の表情が真剣になる
つくしを司の後ろの方へとやり、司はドアを開けた
司「…翼」
翼「…少しは身体良くなったようだな司」
司「ああ」
翼「まあ、あんなことになると思わずに、俺もあんな男子生徒呼んで悪かったよ、今日はお互いにそういうわだかまりをなくした良い会にしよう」
司「……ああ」
翼がニヤッと笑って司の顔の近くで話していたが、ふっと後ろの方にいるつくしに視線を向けた
翼「ふ~ん、白のドレス…ねえ」
つくし「っ…」
司「…婚約者に何か?」
ニコッと笑って司がつくしと翼の前に立つ
その対応に翼が噴き出した
翼「なんだその対応、司じゃねえみたい」
司「…なんも間違ってねえだろ」
翼「‥‥さっきから、敬語になったり普段通りになったり、これじゃあ司の方がボロをだすかもね。このパーティーは遊びじゃない。道明寺家として立派に対応してみろ。そうしたら俺ももうお前たち二人に何も言わない」
翼の言葉につくしと司が顔を見合わせた
司「それは本当か?」
翼「ああ、自信はあるのか?」
司「…真珠も解くか?」
翼「もちろん」
ニコッと笑う翼の言葉はにわかには信じがたい
けれどもともと敵地だと思って乗り込んだこのパーティー。翼からそう提案してもらえたのは二人にとって有難かった。
翼の真意がどうあれここで翼達に認めてもらえるならば、もうこのごたごたした問題は片付く
そう思った二人は翼からの挑戦とも言えるその条件をのむのだった
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