類「気になる事?」
輝「……きっと翼は、あの子の事を…」
輝が言いかけた時、胸元の携帯が鳴った
輝「……失礼」
類「いいよ」
輝「…もしもし」
輝は類から少し離れて携帯をとる
輝「…ああ、すぐに帰るよ、大丈夫」
類「……?」
輝は少しだけ低く優しい声色にかわった
類はいつもと違う輝の声が気になったようだった
輝は携帯を切ると、また類の方へと戻ってきた
輝「……あの子は強い、でも、もしあの子もなずなのようになって、万が一翼の母親のようになる可能性もある。そうなったらきっと救えるのはお前だけだと俺は思うよ」
類「…え?」
輝は類にだけ聞こえる声でそう言うと、肩をポンっと叩いて帰り支度をはじめるのだった
輝「じゃあ今日はもう帰るわ。悪かったな」
西門「ああ、むしろ話してくれてサンキュー」
あきら「まあ結局、翼のことどうするかはまだわかんないけど、理由がわかっただけで対処できるよ」
西門「……牧野の真珠はもういいんだろ?」
輝「たぶん…ね。翼も子供のことがバレたってのでたぶん色々パニくってるだろうし」
司「は?あいつがパニくるタイプかよ」
輝「……やっぱ昔一緒に遊んだくらいじゃあ、人のことなんてわからないもんなのかもな」
司「?今それとこれ関係あんのかよ?」
輝「…あるよ。あと君」
つくし「へ?」
輝「ほんっと~~~に司の財産目当てじゃないって言いきれる?」
司「おい、まだいうのかよ」
西門「…財産目当てに見えるのか?」
輝「……小さなころ遊んだだけだったけど、俺たちは司の事を弟のように思ってた、司だけじゃなくお前らもだけどな。だから近づく女は財産目当てじゃないかどうか確かめなきゃならなかった」
司「やりすぎだろ」
西門「ほんとそれ」
輝「まあ、君が翼の大事だった人たちに似すぎてたってのが誤算だったけどね」
輝はそう言い残し、部屋を出ていった
そして部屋を出た後、廊下を歩く輝が一人立ち止まってつぶやいた
輝「……あの子は、司を裏切らないんだろう…良くも悪くもそんなお前らの姿が、翼にとってのトリガーになってるんだよ」
誰も聞いてない廊下でそんなことを吐き出し、輝はまたコツコツと革靴の音を響かせてホテルから出ていく
外に出ると、小雨が降り始めていた
輝は九条家の車に乗り、家へと向かった
雨は嫌な記憶も呼び起こす
司達に昔のことを話したからだろうか
いつもは考えないようにしていることが次々と思考の邪魔をしてきた
輝は、大きなため息をついて、邪魔する思考と戦い始める
最初は、翼も輝もつくしを財産目当てじゃないか探るつもりだった
そして翼はつくしに悪戯をしかけた
それですぐに逃げ出すろう、翼はそう考えたのだろうと輝は思っていた
けれどつくしは逃げないどころか、2人に立ち向かってきた
売り言葉に買い言葉のように、敵対するようになった
ただの一人の女の子に、そんなに構わなくてもいいのに、翼はやけにつくしを気にしていた
子供のこともあるし、なずなのこともある
輝としてはもう司達とあまり深く関りを持ちたくなかったが、翼の想定外の行動により、どんどん司達との関係は悪化していった
翼は何をやっているんだと心底思ったが、だんだん翼が正気じゃなくなっていくのを輝は見ていられなくなっていった、だから司達に関わってほしくなくて声を荒げたこともあった
輝にとって翼は大事な存在だったのだ
それは輝が小さなころ、風邪をひいたときやつらい時、悩んだ時、常に翼が一緒にいてくれたからだ
司にとっての西門、あきら、類のように
輝と翼の絆は強いものだった
まだ高校生の頃、2人で一緒にモデルになった
まだ覚えたての外国語で、失敗しながら二人で頑張ってきた
そんな時、翼はなずなに恋をした
輝はそんな二人を応援していた
色々あって、なずなと翼はこんなことになった
輝「俺だって、なずなが出ていったとき、傷ついたんだ」
輝は帰りの車の中で、なずなが出ていった日の事を思い出すのだった
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