翼が拳をふりおろしたとき、その拳を司が止めた
翼「…ちっ」
司「…お前、ほんっとクズになったんだな」
翼「…なんだって?」
つくし「ど、道明寺…いつのまに…」
あきら「ナイスタイミーング」
西門「俺はちょっとあの子追いかけとくわ」
あきら「おう」
西門がバタバタと走っていく様子を横目で確認しながら、翼はまた司の方を睨んだ
翼「不法侵入するわ、勝手に物を漁るわ、どっちがクズなんだか」
司「別に悪いと思ってない」
翼「いや、俺が警察呼べばお前ら一発で捕まるぞ」
つくし「…!!」
あきら「おい!翼、それはねえだろ?」
だが、翼の言葉に司はやれやれといった風に、そこにあったデスクへと腰掛け翼の方を睨む
司「やれるもんならやってみろよ。けどお前、まさか牧野にしたこと忘れたんじゃねえだろうな」
あきら「…」
つくし「??」
翼「っ…」
警察に電話しようとし携帯を取り出そうとした翼の手が止まる
あきらも何かを思い出したかのような顔をしていた
それもそうだ、翼は司がいない時を狙い道明寺家別宅に侵入し、つくしに暴行、あろうことか下着姿の写真まで撮っていた
司「はぁ…お前も忘れてんじゃねえよ」
司はつくしの方をみて、深いため息をつく
つくし「だって…あれから色々あったから…」
司「俺はずっと忘れてねえぞ…俺の婚約者に手をだしたこと、自分のくだらねえ感情で俺たちの仲をひかっきまわそうとしたこと。なぁ?翼」
翼「……」
翼は一瞬、睨み返したが、すぐにはぁっと大きなため息をついた
翼「道明寺が西園寺家に勝てるとでも?俺が正式にその女に求婚したらお前との婚約はなしになる…お前はそれぐらい弱い立場だぞ?」
司「はっ、天下の道明寺財閥が、お前の家なんざ怖がるかよ。もしも潰すつもりなら本気で来い。俺も西園寺家を全力で潰してやるよ」
翼「……」
司の目は本気だった
今は、西園寺家の方が地位が上だ
だが、道明寺財閥のいきおいをみると、うかうかしてられない状況でもあるのは確かだった
西園寺家と道明寺家が本気で潰しあえば、幾千もの部下が路頭に迷い、他の企業にも影響がでるだろう
子供じみた争いを、財閥のTOPになった若い二人が選択するわけがなかった
翼「はは…あはははははは」
司「何笑ってんだよ」
翼「ははっ、クソガキだと思ってた司も、大人になるんだな」
司「は?誰だって大人になるだろ」
翼「そういう意味で言ったわけじゃねえよ。はぁ…わかった”真珠”は終了、それでいい?」
司「は?真珠を終了させるためにきたわけじゃねえよ」
つくし「え…」
あきら「おい司、そこは…終わらせとけよ」
司「あ?目的それじゃねえし、真珠ってのはあれだろ?こっちの世界で認められたらどうせチャラになるんだろ?それなら牧野ならすぐチャラになるだろ」
あきら「いや‥だから…」
あきらが口をはさもうとするが、翼が話を遮ってしまった
翼「は?わざわざ不法侵入までしたのは、そいつ守るために俺の弱みでも握ろうとしたんじゃねえの?」
司「違ぇよ!なずなってやつの手紙探してたんだよ!!」
翼「!!なんでなずなのこと…って…輝か」
ちっと舌打ちをする翼に司はたたみかけるように話を続けた
司「お前がこんな風に牧野に執着すんのも、俺たちの仲を気に入らねえのも、その女が原因なんだろうが!牧野重ねて誰みてんだか知らねえがよく見ろ!」
司はつくしの両肩をつかみ、ずずいっと翼の前に押し出した
つくし「ちょっと!!」
司「総二郎とか牧野となずなってやつは似てるとかいってたけどな!よ~~~く見てみろ!似てるわけねえだろ!牧野は目が小さいし!鼻筋も通ってねぇ!顔にほくろもねえじゃねえか!おまけに胸もねえだ…いった!」
つくし「黙って聞いてりゃ!!」
つくしは司が話してる途中、あまりの言葉にスパーーンと平手打ちをかました
翼「……ははっ、言われてみたら、似てないわ」
つくし「!!!」
司「だろ?だから言ったじゃねえか」
そう言った翼の目からはなぜか涙が流れ落ちていた
翼「?!」
つくし「!!逃げないで!!」
自分の涙にびっくりして逃げようとする翼をつくしは腕をがっちりと掴んで止めた
司「クズになったかと思ったら、まだ人間らしく涙でんじゃねえかよ」
翼「…」
あきら「翼、お前…確かにガキ大将みたいなタイプだったけど…ここまで酷いやつじゃなかっただろ、いったい何があってこうなったんだよ、やっぱりなずなって人のせいなのか?」
あきらと司の言葉がきっかけとなったのか、翼にはわからなかったが
まるで何かの決壊が壊れたかのように、翼の目からは涙があとからあとから流れ落ちていくのだった
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