何もない部屋で月の光だけが鮮やかに入ってくる
つくし「はあ…」
深いため息をつくしかないつくし
すっかり月ものぼり暗くなり始めたころ、やっと西門がつくしの部屋へと尋ねてきた
コンコン
珍しく扉を叩く音がする
つくし「あっ西門さん」
西門「…ちょっといいか」
つくし「…はい」
西門は珍しくへこんでいるような雰囲気なため、どうしてあんなことしたのかともう一度怒ろうと考えていたつくしは出鼻をくじかれ素直に受け入れるしかなかった
暗い部屋へと入ってくる西門
そしてゆっくりとその場に座りなんと頭を垂れてこう言った
西門「先ほどはすまない…ついお前が身につけているものをみて驚いてしまった」
つくし「身につけてるものって…」
つくしの顔が真っ赤に染まる
西門が言う身につけてるものとはつくしの下着、ブラの事だ
西門「前にお前が着ていた服は、ここでも作ろうと思えば作れるような形をしていた、だが先ほどみた服の”形”はここでは絶対作れないような形をしていた」
それもそのはず、ブラの形やフォルムは江戸時代のように思えるこの世界で作れるわけがない
つくしは西門の言葉を聞いて、妙に納得してしまった
つくし「まあ、これは珍しいですよね」
つくしは自分の胸元をちらっとみつつ、そうつぶやく
そうして低い声でゆっくりと西門が話し始めた
西門「………お前が話していた世界が本物だとそれを見て確信した……その瞬間、俺がこちらでもあちらでもない人物というのをなんとなくだけど感じてしまった」
冷静な西門の表情がくもりはじめた
つくし「ど、どうしたんですか」
西門「……」
話そうか話さないか迷っているようなそんな表情をしている西門
つくし「な、何か…?」
西門「…実は…」
あまりにも真剣な表情で話し始める西門につられ、つくしにも緊張が走った
西門「お前が言う”あちら”の世界を知っている」
つくし「…は?」
それは、意外な言葉だった
けれど西門が嘘をついているようにも見えない
つくし「それって…西門さん本人?…ってそれならあたしを知ってるか」
つくしがそうつぶやいたとき、西門が先ほどより小さな声で話しを続けた
西門「…夢だ」
つくし「え?」
あまりにも小さな声なため、つくしは聞き返してしまった
西門「夢の中で見た」
つくし「…夢?」
つくしが聞こえて西門に返事した瞬間
西門はがばっと顔をあげ、真剣な瞳でつくしを見つめながら今度ははっきりと言った
西門「お前が言うあちらの世界は、幼少期より見る夢の中の世界とまったく同じなんだ」
つくし「えっ?!!!」
そう、西門はあちらの世界の夢を見ていた
それは物心つく前から
だからつくしからあちらの世界の西門の話を聞いたとき、あまりにも夢と同じ内容なので、どんどんどんどん冷静さを失っていってしまったのだ
西門の言葉を聞き、つくしも瞬時に理解した
つくし「ってことは…」
つくしが言うのを遮り西門が喋る
西門「あちらでもこちらでもないものだというが…わたしは”あちら”の西門総二郎ということじゃないのか…?」
2人、真剣な顔で見つめあう
長い長い満月の夜がはじまった
今日も読んでくださってありがとうございます!!!
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更新が不定期ですが読みにきてくださっていて嬉しいです(*´ω`)