そして次の日、つくしは窓から差し込む光で目が覚めた
つくし「……」
やっぱりまだこの世界にいるのかと少しだけ落ち込むつくしだったが
つくし「落ち込んでても仕方ないよね…よし!」
気持ちを切り替えて床から飛び起きた
つくし「えーーっとなんだっけ、ドレスだっけ」
つくしがこの家の居間らしき場所へとズカズカと入った
すると、居間にはすでに女将さんがいる
女将「おはよう」
つくし「お、おはようございます」
気配がなく女将さんがいたために、つくしはやや驚きながら返事を返した
つくし「あれ?なんか、元気ない?」
女将「……」
つくしの質問に女将さんは深いため息をついたあと、しくしくと泣き出した
女将「…とうとうこの日が来ちゃったねぇ……あんたには城に行く前に話さないといけないことがあるんだよ」
つくし「話…っていうかそんなに泣かないで…」
一言話しては泣いてしまう女将さん
つくしは女将さんに正体をバレるわけにはいかないから、少しだけどう接すればいいのかもわからず、しどろもどろうろたえるしかなかったが
つくし「あの…泣き止んで…」
だが元々優しく世話好きな気質なつくしは泣いている女性を放っておくことなどできない
つくしは女将さんの肩や背中をなだめるように撫でるのだった
女将「………あんたは本当はお姫様…なんだよ…産まれた時に魔女に魔法をかけられてね…針を刺して死んでしまう呪いなんだ…その呪いを無くそうとある魔女が頑張ったけど…結局呪いはとけなくてね…」
女将の言葉につくしの動きが止まる
つくしの心の声(…どこかで聞いたことがあるような…)
女将「…王様は国中の針を処分するようにしたが…針がなければ生活が豊かにはならないからね、隠し持っているものもいる…だから王様に頼まれてわたしはあんたをこの森の奥にかくまって育てていたんだよ」
つくしの心の声(思い出した、これ、童話の眠り姫だ!!!)
その時、つくしの中で昔読んでいた童話が記憶に蘇る
今のつくしの身におこっていることは、眠り姫の話とそっくりだったのだ
つくしの心の声(確か童話では…紡ぎ車の錘に触って死ぬというか100年眠りにつくんだったよね…ここでは針なんだ…ってちょっとまって、もしかしなくてもここは童話のようなお話の世界じゃなくて現実?だから、針に触ったらあたし、死ぬ…?)
つくしはある考えに到達し、死ぬか100年眠るかもしれないという事実に気づく
女将「…ああ、そんな青い顔して震えて…大丈夫だよ、針なんてそんじょそこらに落ちてるものじゃない、針に気づいたらその場から離れたらいいだけなのだから…」
女将はそう言ってつくしの頭を撫でた
つくし「………今日お城に行くのは…」
女将「…あんた…いや、姫ももう婚約しなければならない年齢になったからね…このままずっと森の奥に隠しておくわけにはいかないんだよ…」
つくし「ここここ婚約」
つくしは慌てる、もしも呪いを回避したとしても、今度は見知らぬ人と婚約させられてしまうのだ
つくしの心の声(これはどこかで逃げなきゃ駄目だ)
女将「…泣いていても仕方ない……準備をはじめましょう」
つくし「う、うん」
女将に促され、つくしは準備をはじめた
だが、つくしの心は決まった
”城につく前に逃げて猫を見つけてこの世界から早く逃げないとマズイ”
どうやって逃げようか考えつつ、女将に用意されたドレスを着用したつくし、もちろんバックも忘れずに持った
女将「…さあ、その場に立って」
つくし「え?」
つくしが玄関に向かおうとした時、女将に引き止められる
訳も分からずその場に立ち止まったつくし
すると
女将「……王国へ」
つくし「え?」
女将がそうつぶやくと、つくしと女将の周りが光に包まれた
つくし「ちょ」
そして、一瞬眩しい光に何も見えなくなる、やっと目が見えるようになった時にはもう家の中ではなく、どこかの街の中だった
つくし「え、え、ええええええええええ」
思わずつくしは叫ぶ、それもそうだ、魔法を体験することなど現実にはありえないことなのだから
つくし「これって、これって!」
つくしは女将が居た方を見る、すると女将は先ほどと服装が変わり、少し変わったドレスを着ていた
それはファンタジー映画でよく見る、魔法使いが着てるような服だった
つくし「ま、ま、魔法使い…」
あまりのことに、つくしの目が見開き額から汗が流れだす
女将「秘密にしててごめんね」
つくし「……ははは…」
つくしはもう乾いた苦笑いしかでなくなっていた
魔法使いの女将と一瞬で王国に来てしまった
これでは、逃げることができないかもしれない
つくしの背筋にゾッとした寒気が走った
読んでくださってありがとうございます(*´Д`)
拍手とメッセージもありがとうございます!!
月よりはもう完全ファンタジーですので、ご理解の上楽しんでもらえたら嬉しです(*^^)v