千恵「ほら、これでも食べな」

 

ツカツカと近寄ってきた千恵がつくしにドンと茶碗を手渡した

 

つくし「あ、ありがとう」

 

渡された茶碗の中には、お粥のようなものが入っている

 

つくし「……凄い小さく切った三つ葉が入ってる」

 

つくしは茶碗と一緒に渡された箸でお粥に入った緑の物体をつまみ、くすくすと笑った

 

千恵「……食べれる元気があるなら大丈夫だね、あんた、名前は?あんたはつくしが丘で倒れてたんだよ」

 

つくし「ぶっ」

 

千恵の言葉にお粥を吹き出すつくし

 

つくし「つ、つくしが丘って何それ?!」

 

もちろん、つくしの住んでる街にはそんな丘はない、むしろ聞いたこともない名前だった

 

つくし「あれ?というかあたし……確か猫を追いかけてて…」

 

ふと、つくしは気づく、今いるこの世界が少しおかしなことに

 

つくし「…え」

 

気づいた瞬間、サーーーっと顔から血の気が引く音が自分にも聞こえた

 

千恵「あら、やっぱり顔色が悪いね、ほら、今日はもう寝な、あしたいろいろ聞くからね」

 

千恵がつくしに布団をかけなおし、つくしはそれに流されるように寝るしかなかった

 

だがつくしの頭は、混乱しっぱなしで、冷静になろうと必死だ

 

つくしの心の声「おかしいおかしい、あたしはきっとあそこで倒れたんだ、うん、そうだよ、目が覚めたら元通り、きっとそう…これは夢、これは夢」

 

混乱しているつくしだったが、色々一気に考えて脳が疲れ、そのまますぅっと眠りについてしまう

 

そして、次の日の朝が来た

 

つくし「あはは…夢じゃない…」

 

起き上がったつくしが見たものは、昨日と変わらないあばら家と、隣の部屋で寝相悪く寝ている二人の姿だった

 

つくし「ううん……とりあえずここがどこか…家に帰れるかな」

 

つくしはまだ、自分が帰れると思い込んでいた

 

つくし「あ、あの、おはようございまーす」

 

少し小声で、千恵の耳元で声をかけるつくし

 

千恵「ふがっ」

 

つくしの声にぱちっと目が開いた

 

千恵「ああ、元気そうだね、安心した、何か食べさせてやりたいけど、まだ何も作ってなくてね」

 

まだ眠そうに目をこする千恵に、つくしはこう答えた

 

つくし「あの、簡単なものでよければ、あたし作りますよ。お礼もしたいし」

 

つくしの言葉にぱーーっと目が輝く千恵

 

千恵「そうかい?なんだか悪いねえ、あそこに置いてあるもんはなんでも使っていいから、よろしくね。私は手洗い場の方で洗濯してるから」

 

あくびをしながら、千恵が起き上がり、外へと向かった

 

つくし「せ、洗濯板持ってる…」

 

千恵が持った持ち物を見て驚くつくし

 

つくし「ということはだ……もしかしなくても…」

 

つくしが振り返ると、台所といってもガス台なんかはまったくない、かまどが目の前にあった」

 

つくし「た、たしかこれで吹くはず…」

 

つくしは火吹き竹を手に持ち、TVでみたことがあるかまどへの火のつけ方の記憶を頼りに、見よう見まねで頑張っていた

 

つくし「だめだ…つかない……作るっていっちゃったのに」

 

つくしの顔はすすだらけ、何度やっても素人のつくしが火をつけれるはずがなかった

 

すると

 

男の声「貸せ」

 

つくし「え?」

 

そう、つくしの父親の顔にそっくりの男がいつのまにか起きていて、つくしの火吹き竹を奪う

 

すると…ぱちぱちっとした音とともに、すぐに火が付いたのだった

 

つくし「すっ凄い凄いおとうさん!!!」

 

飛び上がりながら褒めるつくしに、えっへんと嬉しそうな男

 

男の声「朝飯、楽しみにしてるよ、それとわしの名前は春じゃ、よろしくな」

 

そういってガハハと笑いながら、春は手洗い場の方に去っていく

 

つくし「やっぱりうちの父と名前似てる…」

 

春の後姿も父親にそっくりだなと思いながらしばし見つめてしまうつくし

 

つくし「あっ、火が消えないうちに作っちゃお!!」

 

つくしがパッとかまどの方へと向き直る

 

そして手早く慣れた手つきでささっと簡単な朝食を作った

 

つくし「ふう…なんとかそれらしいものができたかな」

 

千恵「あら、いい香り」

 

そこに千恵と春が戻ってきた

 

春「おお、ほんとじゃ」

 

どうやら、顔を洗いにいってた春が拭ききれてない濡れた顔のまま戻ってきた

 

つくし「あ、ちょうどできたとこです」

 

つくしがにこにこ顔で振り向いた

 

朝食を見た春は、感激したのか、眼が輝いていた

 

だがそれとは逆に、千恵が腰から崩れ落ちる

 

千恵「ああああああああ」

 

つくし「え?ど、どうしたんですか??」

 

千恵「一週間分の食糧が……」

 

つくし「ええええええ?」

 

どう考えても、一食分ぐらいしかない材料を使ったが、千恵にはそうではないようだった

 

千恵「ああ…でもそこにあるの使っていいといったのは私だわね」

 

千恵が渇いた笑いをしていた、だが目は笑っていない

 

つくしの心の声「あっそうか……うちの家と似てる二人ってことは貧乏な可能性が……」

 

つくしがある事に気づく、そして慌てて謝った

 

つくし「ご、ごめんなさい」

 

だが、春と千恵は笑って許してくれた

 

春「なあに、また採ってくればいいだけだ」

 

千恵「それもそうね、ほらいただきましょう。美味しそうだわ~~~~」

 

2人の優しさに、つくしの顔が自然と笑顔になる

 

つくしの心の声「ああ、やっぱり大好きなうちの親に似てるな」

 

つくしはそう思うのだった

 

そして、つくしも座り、箸を手に取りいただきますと言ったとき、誰かが訪ねてきた

 

謎の声「すいません、このいい香りはこの家からでしょうか?」

 

気品あふれる声の主は男性のようだった

 

千恵「あ、あの声は」

 

春「もしや…いやまさか」

 

バタバタと二人が玄関の方へと走る

 

つくし「え?え?何???」

 

戸惑うつくしに千恵は叫ぶ

 

千恵「ほら!!あんたもぼーーっとしてないで!!!西門のぼっちゃんがいらっしゃったよ!!!」

 

つくし「に…にしかど…?」

 

つくしはなんとなく嫌な予感がした

 

そう、西門とは、もちろんあの西門のことだった

 

 


 

今日も読んでくださってありがとうございました!!!

 

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