死んだふりをしたつくしの上に重なるようにルイが覆いかぶさってくる
魔女「‥‥」
2人に近づく足音が聞こえ、ルイの身体が持ち上げられたような感覚をつくしは感じた
つくし「っ…」
ルイの気配がなくなったが、つくしはルイに言われた通り必死に目を閉じ息をひそめる
どれくらいの時間そうしていたのだろう
しばらく周囲で聞こえていた数多の足音は聞こえなくなり言葉として聞き取れない呪文を唱えているかのような声を最後に、静けさがやってきた
つくし「……」
あまりにも静寂なため、つくしはおそるおそる目を開けた
つくし「…誰も…いない…」
ずっと同じ格好で寝ていたため、頬には土埃がつき、半身がしびれるような感覚があり、痛みまで感じる
つくし「…ルイ…は」
動きにくい身体であたりを見渡すが、ルイの姿はみあたらなかった
つくし「……お城の人たちは…」
つくしが城の方に視線をうつすと、みなぐったりと座り込み、立っているものも目を閉じた状態という異様な光景だった
つくし「ちょっとまって…まさかと思うけど…」
つくしがしびれる身体で城の兵士たちに近づくと
つくし「やっぱり……」
それはつくしが思う通りの光景だった
つくし「もしかしなくても…全員寝てる…」
つくしが見たのは、眠り姫の物語のように眠りにつかされている兵士たちの姿だった
つくし「で、でもまって…”姫”のはずであるあたしが今ここにいるのになんで…あたしは寝てないの?」
そしてつくしはあることに気づく
それはこの世界が眠り姫の世界だとすると、本来寝ているはずの姫の自分が呪いにかかっていない
つくし「ちょっとまって…じゃあ姫はやっぱり別にいる…?」
つくしはそう思い、本当の姫を探そうとしたとき、また手首のブレスレットが鳴った
つくし「あ‥‥もしかして」
つくしはブレスレットのおかげで、ある可能性に気づいた
つくし「もしかしなくても…あたしだったらあの魔女っぽい人に勝てるのかも」
何かに気づきそう感じたつくしは、ブレスレットを手首ごと握りしめながら、ある決意をするのだった
つくし「とりあえず、先にルイを探そう」
やっと痺れが抜け始めた身体につくしは更に自分の手でダメージを与えた
つくし「もーー足もしびれてる場合じゃないんだってば!」
そう言って、足を叩いたり、飛びはねたりして痺れを逃がしている
つくし「……よし、これで完璧……城の中の人で無事な人いるかもだから…探して色々聞いてみよう」
魔女のいる場所さえわからないつくしには、情報収集が先だ、つくしは城の中へと走って戻った
たくさんある部屋をひとつずつ確認して回るつくし、やはり起きているような人はいなかった
その光景はものすごく不気味で、つくしは物語の怖さを知る
つくし「城のものたちが眠るってこれほど怖いものだったんだ…」
周囲にいる人に声をかけては寝ていて返事をもらえない絶望を味わいながら
つくしは一人ひとり、せめて寝やすいようにと体勢をかえてあげている
そして今は緊急事態でもあるから、申し訳ないと思いつつ、武器庫を発見したためつくしは使えそうなものも借りることに決めた
つくし「武器…使わないかもだけど…念のため…刃物は怖いからこの鞭っぽいやつにしよ」
つくしはそこで試行錯誤してRPGのように装備を選び始めた
つくし「さっきみたく針飛んで来たら怖いから…えっと…この鉄の板っぽいのを胸にあててっと…」
女の声「つくし…つくし…」
つくし「???」
つくしが一生懸命装備をそろえているときに、名前を呼ぶ小さな声が聞こえる
だがその音は蚊の羽音レベルの小さな音だったためにつくしはなかなか聞き取れない
つくし「なんか聞こえたような…?」
つくしは手を止めあたりを確認するがひとっこ一人見当たらない
つくし「……???」
風の音か何かかなとつくしは気にするのをやめ、装備を整え終わる
つくし「よし…魔女がどこにいるかわかんないし…あっ!さっきいた塔っぽいとこなら城の外のほうまで見える!」
つくしはそう思い立つと記憶を頼りに先ほど連れていかれた塔のほうへと急いで向かうのだった
読んでくださってありがとうございます!
月よりは完全ファンタジーです、つっこみどころたくさんあるとは思いますが見逃してください( ;∀;)
ありえない話を楽しんでいただけたら嬉しいです(*´Д`)